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リスクマネジメントのモデル・解析方法について理解
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問題(第1/13問)
【出題基準】 大項目:Ⅳ. 医療安全を推進する 中項目:Ⅳ-1:リスクマネジメント(医薬品安全管理) 小項目:リスクマネジメントのモデル・解析方法について理解している。
【難易度】標準
【問題文】 医療安全におけるハインリッヒの法則に関する以下の記述について、正誤を判定せよ。
【選択肢】 1件の重大な医療事故の背後には、29件の軽微な事故があり、さらにその背後には300件のヒヤリ・ハット(インシデント)が存在するという経験則であり、重大事故を防ぐためには潜在するヒヤリ・ハットを収集し対策することが重要である。
【解答・解説】
─── 【理解する】───
《判定》 正しい。ハインリッヒの法則は「1:29:300の法則」とも呼ばれ、重大事故の背後にある無数のインシデントの重要性を示す概念である。
《核心》
- アメリカの損害保険会社の調査員であったハインリッヒが提唱した労働災害における経験則である。
- 発生比率は「重大事故(1):軽微な事故(29):無傷害事故・ヒヤリハット(300)」である。
- この法則は、氷山の一角モデルとも関連し、目に見える1件の重大事故を防ぐためには、水面下に隠れている300件のヒヤリ・ハット(インシデント)を積極的に報告させ、芽を摘むシステムが必要であることを示している。
《周辺知識》
- 医療現場においてインシデントレポートの提出が強く推奨されるのは、個人の責任を追及するためではなく、この「300のヒヤリ・ハット」を組織全体で共有し、重大事故(1)を未然に防ぐためである。
- 報告を促進するためには、非懲罰的な組織文化(報告者が責められない環境)の醸成が不可欠である。
─── 【覚える】───
《暗記ポイント》
- ★重要:1:29:300の比率:1(重大事故)対 29(軽微な事故)対 300(ヒヤリ・ハット)。
- インシデント報告の目的:個人の責任追及ではなく、システム改善のための情報収集。
【正誤】 ✅
問題(第2/13問)
【難易度】標準
【問題文】 医療事故の発生メカニズムを説明するスイスチーズモデルに関する以下の記述について、正誤を判定せよ。
【選択肢】 スイスチーズモデルは、医療事故が個人の不注意という単一の要因によって引き起こされることを示しており、事故防止には当事者の注意力向上(個人の努力)が最も有効なアプローチであると説明するモデルである。
【解答・解説】
─── 【理解する】───
《判定》 誤り。スイスチーズモデルは個人の不注意(単一要因)を責めるものではなく、多重防護の破綻(システムエラー)によって事故が起きることを説明するモデルである。
《核心》
- イギリスの心理学者ジェームズ・リーズン(James Reason)が提唱したモデルである。
- 医療現場には、医師の処方、薬剤師の監査、看護師のダブルチェックなど、事故を防ぐための「多重の防護壁」が存在する。
- しかし、これらの壁にはスイスチーズのように「穴(欠陥)」が空いており、複数の壁の穴が偶然一直線に並んだ時に、エラーが全ての壁を貫通して重大な医療事故が発生する。
- したがって、事故防止には「人間は必ずエラーをする」という前提に立ち、個人の注意力に依存するのではなく、システム全体の穴を小さくする、または防護壁を増やす「システム的アプローチ」が必要である。
《周辺知識》
- 個人の不注意やルール違反を「アクティブ・エラー(顕在的エラー)」と呼ぶのに対し、組織の管理体制やマニュアルの不備など、背景に潜む要因を「ラテント・エラー(潜在的エラー)」と呼ぶ。
- スイスチーズモデルは、ラテント・エラーの発見と改善の重要性を強調している。
─── 【覚える】───
《暗記ポイント》
- ★重要:多重防護の破綻:複数の防護壁の欠陥(穴)が偶然重なった時に事故が起きる。
- ★重要:システム的アプローチ:個人の責任(ヒューマンエラー)を責めるのではなく、組織・システムのエラー誘発要因を改善する考え方。
- 提唱者:ジェームズ・リーズン(James Reason)。
【正誤】 ❌
問題(第3/13問)
【難易度】標準
【問題文】 ヒューマンファクターの分析に用いられるm-SHELモデルに関する以下の記述について、正誤を判定せよ。
【選択肢】 m-SHELモデルを構成する要素のうち、「S(Software)」は医療機器や薬剤の外観・パッケージなどの物理的な要素を指し、「H(Hardware)」はマニュアルや手順書などのルールを指す。
【解答・解説】
─── 【理解する】───
《判定》 誤り。「S(Software)」と「H(Hardware)」の定義が逆である。Sはマニュアル等のルール、Hは機器や薬剤等の物理的要素を指す。
《核心》
- m-SHELモデルは、エラーの要因を当事者(L)と周囲の環境・システムとの「インターフェース(接点)」の不適合として分析するモデルである。
- 各アルファベットの定義は以下の通りである。
- m (Management):管理・組織(病院の経営方針、教育体制など)
- S (Software):ソフトウェア(マニュアル、手順書、ルールなど)
- H (Hardware):ハードウェア(医療機器、設備、薬剤の外観・名称など)
- E (Environment):環境(照明、騒音、温度、作業スペースなど)
- L (Liveware):当事者本人(中心となる人間)
- L (Liveware):周囲の人間(同僚、医師、看護師、患者など)
《周辺知識》
- インシデントが発生した際、「似た名前の薬が隣の棚にあった」という要因は、当事者(L)と薬剤・設備(H)のインターフェースの不適合として分類される。
- 「確認手順のルールが曖昧だった」という要因は、当事者(L)と手順書(S)のインターフェースの不適合として分類される。
- RCA(根本原因分析)を行う際、要因を漏れなく抽出するためのフレームワークとしてm-SHELモデルが活用される。
─── 【覚える】───
《暗記ポイント》
- ★重要:S(Software):目に見えないルール、マニュアル、手順書。
- ★重要:H(Hardware):目に見えるモノ、医療機器、薬剤の外観・名称(LASなど)。
- 中心のL:必ず当事者本人が中心に位置し、他の要素との接点(インターフェース)でエラーが生じる。
【正誤】 ❌
【用語解説】 ・インシデント(Incident):患者に実害が及ばなかった、あるいは軽微な影響にとどまった出来事(ヒヤリ・ハット)。 ・アクシデント(Accident):患者に重大な実害(濃厚な処置、後遺症、死亡など)を及ぼした医療事故。 ・LAS(Look-Alike, Sound-Alike):外観類似・名称類似の医薬品。m-SHELモデルにおける「H(Hardware)」の代表的なエラー誘発要因。
問題(第4/13問)
【難易度】標準
【問題文】 医療安全におけるRCA(根本原因分析)に関する以下の記述について、正誤を判定せよ。
【選択肢】 RCA(Root Cause Analysis)は、新しい業務やシステムを導入する前に潜在的なリスクを予測し、未然に事故を防ぐための事前分析手法であり、特性要因図(フィッシュボーンチャート)を用いて評価を行う。
【解答・解説】
─── 【理解する】───
《判定》 誤り。RCAは「事前分析」ではなく、すでに発生した重大な事故に対して行う「事後分析」手法である。事前分析手法はFMEAである。
《核心》
- RCA(Root Cause Analysis:根本原因分析)は、「すでに起きてしまった重大なインシデント・アクシデント(事後)」に対して、なぜそれが起きたのかを徹底的に掘り下げる分析手法である。
- 表面的な原因(例:確認不足)で立ち止まらず、「なぜ?」を複数回(一般的に5回)繰り返す「なぜなぜ分析」を用い、根本原因(Root Cause)を突き止める。
- 要因を視覚的に整理し、漏れなく抽出するために「特性要因図(フィッシュボーンチャート:魚の骨図)」がよく用いられる。魚の頭に「結果(事故)」を書き、背骨に向かって大骨(m-SHELの要素など)、中骨、小骨と要因を細分化していく。
《周辺知識》
- RCAは時間と労力を要するため、すべてのインシデントに対して行うわけではなく、一般的に患者への影響度が大きい(レベル3b以上など)重大な事例や、再発リスクが高い事例に対して実施される。
- RCAの目的は「誰が間違えたか(個人の責任)」を追及することではなく、「なぜ間違えやすいシステムになっていたか(システムの欠陥)」を明らかにし、再発防止策を立案することである。
─── 【覚える】───
《暗記ポイント》
- ★重要:RCAは「事後分析」:発生した事故の再発防止に用いる。
- ★重要:関連キーワード:なぜなぜ分析、特性要因図(フィッシュボーンチャート)。
- 対比:事前分析(未然防止)に用いるのはFMEAである。
【正誤】 ❌
問題(第5/13問)
【難易度】標準
【問題文】 医療安全におけるFMEA(故障モード影響解析)に関する以下の記述について、正誤を判定せよ。
【選択肢】 FMEA(Failure Mode and Effects Analysis)は、新規のハイリスク薬の導入時などにおいて、業務プロセスを事前に分解して潜在的なエラー(故障モード)を予測し、対策の優先順位を決定するための事前分析手法である。
【解答・解説】
─── 【理解する】───
《判定》 正しい。FMEAは、事故が起きる前にリスクを予測し、未然に防ぐための事前分析手法である。
《核心》
- FMEA(Failure Mode and Effects Analysis:故障モード影響解析)は、「新しい業務やシステムを導入する前(事前)」に、どこでどのような失敗(故障モード)が起こり得るかを予測し、対策を立てる手法である。
- 例えば、新しい抗がん剤のミキシング業務を始める前に、「処方入力」「監査」「調製」「運搬」「投与」の各プロセスに細かく分解し、それぞれのステップで起こり得るエラー(例:規格間違い、投与速度設定エラー等)を洗い出す。
- 洗い出したエラーに対してリスクの大きさを定量化(数値化)し、優先的にシステム改善(バーコード認証の導入など)を行う箇所を決定する。
《周辺知識》
- 医療現場では、過去に経験のない新しいプロトコルや、重大な結果が予想されるハイリスク薬(抗悪性腫瘍剤、カリウム製剤など)の運用を開始する際に特に有用である。
- RCA(事後分析)で得られた過去の教訓を、FMEAの評価に活かすことが理想的なリスクマネジメントのサイクル(PDCA)となる。
─── 【覚える】───
《暗記ポイント》
- ★重要:FMEAは「事前分析」:事故が起きる前に、潜在的なリスクを予測・評価する。
- ★重要:関連キーワード:プロセス分解、未然防止、RPN(リスク優先度)。
- 対比:事後分析(再発防止)に用いるのはRCAである。
【正誤】 ✅
問題(第6/13問)
【難易度】標準
【問題文】 FMEA(故障モード影響解析)において算出されるRPN(リスク優先度)に関する以下の記述について、正誤を判定せよ。
【選択肢】 RPN(Risk Priority Number)は、想定されるエラーについて「発生頻度」「影響度」「検出困難度」の3つの要素を掛け合わせて算出され、この数値が高いプロセスから優先的に対策を講じる。
【解答・解説】
─── 【理解する】───
《判定》 正しい。RPNは「発生頻度 × 影響度 × 検出困難度」で算出され、リスクの大きさを定量化する指標である。
《核心》
- FMEAにおいて、洗い出した各エラー(故障モード)に対して、以下の3つの指標を一般的に1〜10点で評価する。
- 発生頻度(O:Occurrence):そのエラーがどれくらい起こりやすいか?
- 影響度(S:Severity):そのエラーが起きたら、患者にどれくらい重大な影響を及ぼすか?
- 検出困難度(D:Detection):そのエラーが起きた時に、次の工程でどれくらい気づきにくいか?
- これら3つの数値を掛け合わせたものがRPN(Risk Priority Number:リスク優先度)である(RPN = O × S × D)。
- RPNが高い(最大1000点)プロセスほど、放置すれば重大な事故に直結する危険性が高いため、優先的に対策(システムの変更や防護壁の追加)を行う。
《周辺知識》
- 「検出困難度」の概念が特に重要である。エラーが発生しても、次の工程(例:薬剤師の監査や看護師のダブルチェック)で確実に発見できる(検出が容易な)場合は点数が低くなる。逆に、一度エラーが起きるとそのまま患者に投与されるまで誰も気づけない(検出が困難な)場合は点数が高くなり、RPNを大きく押し上げる。
- 主観的な「危ない」という感覚を、数値(スコア)に変換することで、客観的かつ統計的に対策の優先順位を決定できる。
─── 【覚える】───
《暗記ポイント》
- ★重要:RPNの算出式:RPN = 発生頻度 × 影響度 × 検出困難度。
- ★重要:検出困難度の意味:エラーに「気づけない(スルーしてしまう)」確率が高いほど、点数が高くなる(危険とみなす)。
- RPNの活用:数値が高いプロセスから優先的に対策を講じる。
【正誤】 ✅
【用語解説】 ・RCA(Root Cause Analysis):根本原因分析。発生した事故の背後にあるシステム上の欠陥を究明する事後分析手法。 ・FMEA(Failure Mode and Effects Analysis):故障モード影響解析。業務プロセスを分解し、潜在的なリスクを予測・評価する事前分析手法。 ・RPN(Risk Priority Number):リスク優先度。FMEAにおいて対策の優先順位を決定するための定量的な指標。
問題(第7/13問)
【難易度】やや難
【問題文】 医療安全におけるリスクマネジメント手法(RCAおよびFMEA)の使い分けに関する以下の記述のうち、正しいものを1つ選べ。
【選択肢】 a. RCAは、新規の抗がん剤プロトコルを導入する際など、未経験の業務プロセスに潜むリスクを事前に予測し、対策の優先順位を決定するために用いられる。 b. FMEAは、発生した重大な医療事故に対して「なぜなぜ分析」を繰り返し、特性要因図を用いて根本原因を究明する事後分析手法である。 c. FMEAにおいて算出されるRPN(リスク優先度)は、「発生頻度」「影響度」「検出困難度」の3要素の積で表され、この数値が高いプロセスほど優先的にシステム改善の対象となる。
【解答・解説】
a. ❌
- RCA(Root Cause Analysis:根本原因分析)は、すでに発生した重大なインシデントやアクシデントに対して行う「事後分析手法」である。
- 新規の抗がん剤プロトコル導入時など、未経験の業務プロセスに潜むリスクを事前に予測し、事故を未然に防ぐために用いられるのはFMEA(故障モード影響解析)である。
- RCAを事前評価に用いるとする本肢は、手法の目的と適用場面を完全に逆転させており誤りである。
b. ❌
- FMEA(Failure Mode and Effects Analysis)は、業務プロセスを分解して潜在的なエラーを予測する「事前分析手法」である。
- 発生した重大な医療事故に対して「なぜなぜ分析」を繰り返し、特性要因図(フィッシュボーンチャート)を用いて根本原因を究明するのはRCAである。
- 本肢もRCAとFMEAの定義と特徴を意図的に入れ替えた典型的な誤答肢(対極の法則)である。
c. ✅
- FMEAにおいて、洗い出した各エラー(故障モード)のリスクの大きさを定量化する指標がRPN(Risk Priority Number:リスク優先度)である。
- RPNは、「発生頻度(Occurrence)」「影響度(Severity)」「検出困難度(Detection)」の3つの要素を掛け合わせて算出される(RPN = O × S × D)。
- この数値が高い(最大1000点)プロセスほど、放置すれば重大な事故に直結する危険性が高いため、優先的に対策(バーコード認証の導入などのシステム改善)を行う対象となる。
《暗記ポイント》
- ★重要:RCAとFMEAの対比:
- RCA:事後分析、再発防止、なぜなぜ分析、特性要因図。
- FMEA:事前分析、未然防止、プロセス分解、RPN(リスク優先度)。
- RPNの構成要素:発生頻度 × 影響度 × 検出困難度。
問題(第8/13問)
【難易度】やや難
【問題文】 日本医療機能評価機構が定める「インシデント影響度分類」に関する以下の記述のうち、正しいものを1つ選べ。
【選択肢】 a. 薬剤師が処方監査において過量投与の疑義を発見し、医師に照会して処方が修正された結果、患者には誤った薬剤が投与されなかった場合、影響度レベルは「レベル1」に分類される。 b. 誤った薬剤が患者に投与されたが、バイタルサインの変動などの実害が全く認められなかった場合、影響度レベルは「レベル0」に分類される。 c. 誤った薬剤が患者に投与され、発疹が出現したため抗ヒスタミン薬の投与という簡単な処置が必要となった場合、影響度レベルは「レベル3a」に分類される。
【解答・解説】
a. ❌
- インシデント影響度分類において、エラーが発生したものの、患者に「実施されなかった」場合(未然に防がれた場合)は「レベル0」に分類される。
- 薬剤師の処方監査や疑義照会によって、患者への投与前に過量投与エラーが回避された本ケースは、典型的なレベル0の事例である。
- レベル1は、患者に「実施された」が実害がなかった場合を指すため、本肢は誤りである。
b. ❌
- 誤った薬剤が患者に「実施された(投与された)」時点で、レベル0には該当しなくなる。
- 投与された結果、患者に実害(バイタルサインの変動や症状の出現)が全く認められなかった場合は、「レベル1」に分類される。
- レベル0とレベル1の境界は「患者に実施されたか、されなかったか」であるため、本肢は誤りである。
c. ✅
- 患者に誤った薬剤が投与され、何らかの症状が出現して処置が必要となった場合、その処置の程度によってレベルが分類される。
- 観察の強化や軽微な処置にとどまる場合は「レベル2」、簡単な処置・治療が必要となった場合は「レベル3a」に分類される。
- 本ケースのように、発疹に対して抗ヒスタミン薬を投与するなどの簡単な処置で済んだ場合はレベル3aが正当である。なお、アナフィラキシー等で濃厚な処置や入院期間の延長が必要となった場合は「レベル3b」となる。
《暗記ポイント》
- ★重要:レベル0とレベル1の境界:患者に「実施されたか、されなかったか」。実施されていなければレベル0。
- ★重要:レベル3aと3bの境界:処置の程度。「簡単な処置」なら3a、「濃厚な処置(入院延長など)」なら3b。
- アクシデントの定義:一般的にレベル3b以上(濃厚な処置、永続的障害、死亡)を指す。
問題(第9/13問)
【難易度】やや難
【問題文】 医療現場の安全活動として実施されるKYT(危険予知訓練)の4ラウンド法に関する以下の記述のうち、正しいものを1つ選べ。
【選択肢】 a. 第1ラウンド(現状把握)では、イラストや写真に潜む危険要因を洗い出し、続く第2ラウンド(対策樹立)で直ちに具体的な解決策を出し合う。 b. 第2ラウンド(本質追究)では、洗い出された危険要因の中から「これが最も重要な危険のポイントだ」とチームで合意し、危険の本質を絞り込む。 c. 第4ラウンド(目標設定)では、過去に発生した重大事故の特性要因図を作成し、根本原因に対する組織的なシステム改善案を経営陣に提案する。
【解答・解説】
a. ❌
- KYT(危険予知訓練)の4ラウンド法において、第1ラウンド(現状把握)で危険要因を洗い出した後、直ちに対策を立てるわけではない。
- 第2ラウンドは「本質追究」であり、洗い出した危険の中から最も重要なポイントを絞り込むステップである。
- 具体的な解決策を出し合う「対策樹立」は第3ラウンドで行われるため、順序を誤って説明している本肢は不適切である。
b. ✅
- KYTの第2ラウンドは「本質追究」である。
- 第1ラウンドで多数挙げられた危険要因(「〜なので〜になる」という事象)の中から、チームで話し合い、「これが最も重要な危険のポイントだ(急所)」と合意して絞り込むプロセスである。
- このステップを踏むことで、的外れな対策ではなく、真に防ぐべき危険に対する有効な対策(第3ラウンド)を立てることができる。
c. ❌
- KYTの第4ラウンドは「目標設定」であり、第3ラウンドで出た対策の中から、チームとして実践する具体的な行動目標(例:「名称確認、ヨシ!」といった指差呼称)を設定するステップである。
- 過去に発生した重大事故の特性要因図を作成し、根本原因を究明するのはRCA(事後分析)の手法であり、日常の危険予知活動であるKYTのステップではない。
- 異なるリスクマネジメント手法の概念を混同させているため誤りである。
《暗記ポイント》
- ★重要:KYT 4ラウンド法の順序:
- 第1ラウンド(現状把握):どんな危険が潜んでいるか?
- 第2ラウンド(本質追究):これが危険のポイントだ!
- 第3ラウンド(対策樹立):あなたならどうする?
- 第4ラウンド(目標設定):私たちはこうする!(指差呼称の設定)
- KYTの目的:スタッフ全員の危険に対する感受性を高める日常的な安全活動。
【用語解説】 ・KYT(Kiken Yochi Training):危険予知訓練。イラストや現場の状況から危険を予測し、対策を共有する小集団活動。 ・指差呼称(しさこしょう):「〇〇ヨシ!」と対象物を指差し、声に出して確認することで、意識レベルをクリアにしヒューマンエラーを防ぐ手法。KYTの第4ラウンドで設定されることが多い。
問題(第10/13問)
【難易度】やや難
【症例提示】 患者:72歳、男性 主訴:特になし(高血圧症および脂質異常症で入院中) 既往歴:高血圧症、脂質異常症 現病歴:病棟において、看護師が本患者に朝食後の内服薬を配薬する際、同室の別の患者(糖尿病)の薬である「グリメピリド(アマリール)錠1mg」を誤って配薬しそうになった。直前に患者本人が「いつもと薬の形が違う」と指摘したため、服用前にエラーが発覚し、事なきを得た。 検査値:特記事項なし 服用薬: ・アムロジピン(アムロジン)錠5mg 1日1回 朝食後 ・アトルバスタチン(リピトール)錠10mg 1日1回 朝食後 身体所見:バイタルサイン正常。
【問題文】 病棟薬剤師は、医療安全管理者とともにこのインシデントのRCA(根本原因分析)を実施した。特性要因図を用いて要因を洗い出したところ、以下の要因が抽出された。 「アムロジピン錠とグリメピリド錠のPTPシートの色調およびデザインが極めて類似しており、かつ病棟の配薬カート内で隣接する引き出しに保管されていた。」 この要因は、ヒューマンファクターの分析モデルである「m-SHELモデル」において、中心となる当事者(L:Liveware)とどの要素とのインターフェースの不適合に分類されるか。最も適切なものを1つ選べ。
【選択肢】 a. m(Management:管理・組織) b. S(Software:ソフトウェア) c. H(Hardware:ハードウェア) d. E(Environment:環境) e. L(Liveware:周囲の人間)
【解答・解説】
a. ❌ m(Management)は、病院の経営方針、人員配置、教育体制、組織風土などの「管理・組織」的要因を指す。本事例の「PTPシートの外観類似」や「保管場所」は物理的な要因であり、管理体制そのものを指すものではないため誤りである。
b. ❌ S(Software)は、マニュアル、手順書、確認ルールなどの「目に見えない規則や手順」を指す。もし要因が「配薬時の氏名確認ルールが曖昧だった」であればSに分類されるが、本事例は物理的なモノに関する要因であるため誤りである。
c. ✅ H(Hardware)は、医療機器、設備、そして「薬剤そのものの外観・名称(LAS:Look-Alike, Sound-Alike)」などの「目に見える物理的なモノ」を指す。本事例における「PTPシートの色調・デザインの類似」および「配薬カート(設備)の隣接保管」は、まさに当事者(L)と物理的要素(H)とのインターフェースの不適合であり、Hに分類するのが最も適切である。
d. ❌ E(Environment)は、照明の暗さ、騒音、温度、作業スペースの狭さなどの「作業環境」を指す。もし要因が「ナースステーションが騒がしく、集中力が削がれた」や「薄暗くてPTPシートの文字が読めなかった」であればEに分類されるが、本事例の主因は薬剤の外観と配置であるため誤りである。
e. ❌ L(Liveware:周囲の人間)は、同僚、医師、患者本人など「当事者以外の人間」とのコミュニケーションや連携を指す。もし要因が「前の勤務者からの申し送りが不十分だった」であればLに分類されるが、本事例には該当しない。
【正解】c
《ガイドライン選択薬》
- 高血圧症の第一選択薬:カルシウム拮抗薬(アムロジピン等)、ARB/ACE阻害薬、サイアザイド系利尿薬
- 脂質異常症(高LDLコレステロール血症)の第一選択薬:スタチン系薬(アトルバスタチン等)
《暗記ポイント》
- ★重要:m-SHELモデルの「H」:Hardware(ハードウェア)。医療機器、設備、薬剤の外観・名称(LAS)など、目に見える物理的なモノ。
- ★重要:m-SHELモデルの「S」:Software(ソフトウェア)。マニュアル、手順書、ルールなど、目に見えない規則。
- インシデントのレベル判定:本事例は患者に「実施されなかった(服用前に気づいた)」ため、影響度分類は「レベル0」となる。
問題(第11/13問)
【難易度】難
【症例提示】 患者:該当なし(新規業務導入前の多職種カンファレンス場面) 主訴:該当なし 既往歴:該当なし 現病歴:該当なし 検査値:該当なし 服用薬:該当なし 身体所見:該当なし
【問題文】 当院において、重篤な副作用(サイトカイン放出症候群等)のリスクが高い新規の二重特異性抗体(バイスペシフィック抗体)を用いたがん化学療法プロトコルを新たに導入することとなった。 病棟薬剤師は、運用開始前に医療安全対策を講じるため、多職種チーム(医師、薬剤師、看護師)でFMEA(故障モード影響解析)を実施することを提案した。 このFMEAの実施手順および評価に関する病棟薬剤師の提案として、最も適切なものを1つ選べ。
【選択肢】 a. 「他院で発生したこの薬剤に関する重大な医療事故の事例を収集し、なぜなぜ分析を繰り返して根本原因を究明し、当院の特性要因図を作成しましょう。」 b. 「処方入力から調製、投与に至る業務プロセスを細かく分解し、各ステップで起こり得るエラーについて『発生頻度』『影響度』『検出困難度』の3要素を足し合わせてRPNを算出し、点数が高いものから対策しましょう。」 c. 「各プロセスで起こり得るエラーについてRPN(リスク優先度)を算出します。この際、エラーが発生しても次の工程で容易に発見できる(検出が容易な)プロセスほど、RPNの点数を高く設定して優先的に対策しましょう。」 d. 「業務プロセスを分解して潜在的なエラーを洗い出し、各エラーの『発生頻度』『影響度』『検出困難度』を掛け合わせてRPNを算出します。RPNが高いプロセスに対して、バーコード認証の導入などのシステム的な防護壁を優先的に構築しましょう。」 e. 「日常業務に潜む危険に対するスタッフの感受性を高めるため、この薬剤の調製風景のイラストを用いて、現状把握から目標設定に至る4ラウンド法を実施しましょう。」
【解答・解説】
a. ❌ 他院で発生した事故に対して「なぜなぜ分析」や「特性要因図」を用いて根本原因を究明する手法は、RCA(事後分析)である。本事例は「新規プロトコルの導入前(未経験の業務)」であり、事前に潜在的リスクを予測するFMEAの実施手順としては不適切である。
b. ❌ FMEAにおいてプロセスを分解し、3つの要素を評価する点は正しいが、RPN(Risk Priority Number)の算出方法は「足し算」ではなく「掛け算(積)」である(RPN = 発生頻度 × 影響度 × 検出困難度)。計算式が誤っているため不適切である。
c. ❌ RPNの構成要素である「検出困難度(Detection)」の解釈が逆である。エラーが発生した際に、次の工程で「容易に発見できる(検出が容易)」場合は、事故を未然に防げる可能性が高いため、点数は低く設定される。逆に「誰も気づけない(検出が困難)」場合ほど点数が高くなり、RPNを押し上げる。
d. ✅ FMEAの正しい実施手順である。新規業務のプロセスを細かく分解し、潜在的なエラー(故障モード)を洗い出す。それらに対して「発生頻度」「影響度」「検出困難度」の3要素を掛け合わせてRPNを算出する。RPNが高い(リスクが大きく、かつ気づきにくい)プロセスに対して、個人の注意力に依存しないシステム的な防護壁(バーコード認証等)を優先的に構築することが、最も適切な事前リスクマネジメントである。
e. ❌ イラスト等を用いて現状把握から目標設定に至る4ラウンド法を実施する手法は、KYT(危険予知訓練)である。KYTは日常的な安全活動としては重要だが、新規プロトコル導入前の体系的なリスク評価手法(FMEA)の説明としては誤りである。
【正解】d
《ガイドライン選択薬》
- 二重特異性抗体(例:エピコリタマブ、テクリスタマブ等)は、再発・難治性の悪性リンパ腫や多発性骨髄腫等の治療ガイドラインにおいて、特定の治療ラインで推奨されるハイリスク薬である。
《暗記ポイント》
- ★重要:FMEAの目的:新規業務やハイリスク薬導入前の「事前分析(未然防止)」。
- ★重要:RPNの算出式:RPN = 発生頻度 × 影響度 × 検出困難度(※掛け算であることに注意)。
- 検出困難度の意味:エラーに「気づきにくい」ほど点数が高くなり、優先対策の対象となる。
問題(第12/13問)
【難易度】難
【症例提示】 患者:68歳、女性 主訴:特になし(肺炎治療のため入院中) 既往歴:高血圧症 現病歴:肺炎のため当院に入院。入院時の持参薬鑑別において、患者が持参した「アムロジピン(アムロジン)錠5mg」を、薬剤師が誤って「アムロジピン錠2.5mg」として鑑別報告書を作成した。医師はその報告書に基づき、入院処方としてアムロジピン錠2.5mgを電子カルテに入力した。 患者にはアムロジピン錠2.5mgが2日間(計2回)投与された。 入院3日目、別の病棟薬剤師が持参薬の実物と処方内容を照合した際にエラーを発見し、直ちに主治医に報告した。 検査値:血圧 145/90 mmHg(普段は120/80 mmHg程度) 服用薬: ・アムロジピン(アムロジン)錠2.5mg 1日1回 朝食後(※本来は5mg) ・アンピシリン/スルバクタム(ユナシン)静注用 1日3回 身体所見:自覚症状(頭痛、めまい等)なし。
【問題文】 主治医は報告を受け、「血圧が普段よりやや上昇しているが、自覚症状はなく緊急の降圧処置は不要である。本日から本来の5mgに処方を修正し、病棟看護師に血圧の推移を注意深く観察するよう指示する」と判断した。 このインシデントについて、日本医療機能評価機構が定める「インシデント影響度分類」のレベルとして最も適切なものを1つ選べ。
【選択肢】 a. レベル0 b. レベル1 c. レベル2 d. レベル3a e. レベル3b
【解答・解説】
a. ❌ レベル0は、エラーが発生したものの、患者には「実施されなかった」場合を指す。本症例では、誤った用量(2.5mg)の薬剤がすでに2日間患者に投与(実施)されているため、レベル0には該当しない。
b. ❌ レベル1は、患者に実施されたが、「実害が全くなかった(観察の強化等も不要)」場合を指す。本症例では、減量投与によって血圧が普段より上昇(145/90 mmHg)しており、主治医が「血圧の推移を注意深く観察する」という指示を出しているため、レベル1よりも影響度が大きいと判断される。
c. ✅ レベル2は、患者に実施され、「観察の強化や軽微な処置が必要だった」場合を指す。本症例では、誤投与によって血圧上昇という実害が生じ、主治医によって「血圧推移の注意深い観察(観察の強化)」が指示されている。緊急の降圧薬静注などの「簡単な処置・治療」までは行われていないため、レベル2に分類するのが最も適切である。
d. ❌ レベル3aは、患者に実施され、「簡単な処置・治療が必要だった」場合を指す。もし本症例で、血圧が著しく上昇し、速効性の降圧薬(ニフェジピン等)の追加投与や点滴による処置が行われていればレベル3aとなるが、今回は観察の強化にとどまっているため誤りである。
e. ❌ レベル3bは、患者に実施され、「濃厚な処置・治療(入院期間の延長など)が必要だった」場合を指す。本症例の状況はこれに該当しない。一般的にレベル3b以上が「アクシデント(医療事故)」として扱われる。
【正解】c
《ガイドライン選択薬》
- 高血圧治療ガイドラインにおいて、アムロジピン(カルシウム拮抗薬)は第一選択薬の一つである。持参薬の継続においては、用量(2.5mg、5mg、10mg)の正確な鑑別が血圧コントロール維持に不可欠である。
《暗記ポイント》
- ★重要:影響度分類の境界線:
- レベル0:実施されなかった。
- レベル1:実施されたが、実害なし。
- レベル2:実施され、観察の強化や軽微な処置が必要。
- レベル3a:実施され、簡単な処置・治療が必要。
- レベル3b:実施され、濃厚な処置・治療(入院延長等)が必要。
【用語解説】 ・RCA(Root Cause Analysis):根本原因分析。 ・FMEA(Failure Mode and Effects Analysis):故障モード影響解析。 ・RPN(Risk Priority Number):リスク優先度。 ・LAS(Look-Alike, Sound-Alike):外観類似・名称類似。
【出典】 ・医療安全管理者のための業務指針(厚生労働省) ・日本医療機能評価機構「医療事故情報収集等事業」報告書および集計基準 ・日本病院薬剤師会「病院薬学認定薬剤師研修ガイドライン」